世田谷区役所第1庁舎

世田谷区役所の第1庁舎です。本庁舎等整備工事の一環で進められていた、新庁舎第1期棟(東棟:高層部)の新築と区民会館の大規模リノベーションが3月末に竣工しましたので、いよいよ第1庁舎が解体される時期(2期工事の中で計画されています)が近づいてきました。

日本の建築史上、極めて価値の高い建物と評価された故前川國彦氏(1905-1986年)の設計による既存の第一庁舎(1960年9月竣工)、区民会館(1959年3月竣工)ですが、第1期の大規模リニューアルで、広場やホワイエはなくなりましたので、広場を中心に置いた設計の意図は、既に存在しなくなっているように見えました。

創建当時の世田谷区役所は、RC(鉄筋コンクリート)造地下1階地上5階建ての第一庁舎とRC造地下1階地上2階建て区民会館をピロティで結び、庁舎間に広場を設けていました。この広場を建築物群の中心に据えた「郊外の地域文化施設」としての在り方を示した設計は、国内で最初期の事例として高く評価されています。第一庁舎と区民会館は2014年、「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」(DOCOMOMO JAPAN)にも選定されました。

建替えにあたってはこうした「空間特質」の継承が焦点の一つになっていました。区民会館は、舞台などを含めたホール部のみ保存再生されました市民の休憩場として機能していたホワイエはなくなりました。今後解体される第1庁舎の中央部には吹き抜けの玄関ホールがありました。この壁には大沢昌助のデザインしたレリーフが飾られていましたが、これもなくなるようです(再利用されない)。

ホールの天井は、格子状の梁になっており、トップライトから柔らかな光が注ぐ、穏やかな空間になっていました。最初に下から見上げた時は青い色と白色のコントラストが面白いと思ったのですが、上層階に登ってみると何のことはない、ブルーシートの青でした(雨漏り対策かな?)

日本建築学会や区民らが保存を求める要望書を提出しましたが、願いは叶いませんでした。モダニズム建築の大家として知られる前川國男がモダニズム建築の手法を屈指した希有な建築物がまた一つ、姿を消します(区民会館の大規模リニューアル時点で消えたのかもしれませんが)。

地球温暖化やIT化への対応、修繕工事など色々と手はかかりそうですが、まだまだ使い続けられる建物だと個人的には思いました。東棟の高層階から見下ろすと周辺に高い建物が少ないこともわかります。こうした姿も住宅地の中にある区役所として「世田谷」の街を表すランドマークなのだと感じました。

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