神奈川県と地域建設企業(その2)

 前回の投稿で、神奈川県の人口に比して建設業就業者数の数が少ないことを書きました。能登半島地震における震災復旧・復興の遅延について、地域建設企業の力が失われつつあることの証明だからと思ったからです。神奈川県よりも復旧・復興の条件が整っていた石川県ですら、現在の厳しい状況があると考えたからです。ただ県内の建設業就業者数と「道路啓開を行う力」はイコールではありません。

 そこで今回はは別の角度から神奈川県における「地域の建設企業」の状況を把握していけるようにしたいと思います。それは業界団体に加盟している企業の数です。建設産業で働く人々は、ほとんどが組織に属しています。ひと言に建設業で働く人といっても総合建設業であったり、設備業であったり、専門工事業であったりと、分業化が進んでいます。状況は異なるので比較対象にはなりませんが、全国建設業協会は全都道府県に支部があります。

下記の表は、都道府県ごとの建設業許可業者数と都道府県ごとの全建加入企業数を割った「組織率」を並べたものです一覧表を掲載します。これは全建ジャーナルの2024年10月号に掲載されていた全国建設業協会(大臣・知事許可資本金階層別会員数調査)(令和6年6月末現在)です。。特徴的なのは、政令指定都市を抱える都道府県が下位に並びます。私見ではありますが、民間工事と政令指定都市の公共投資が多く事業量の確保に困らないため、都道府県の公共投資に興味を持たない傾向があると思います。

都道府県総数大臣知事建設業許可業者全建加入割合順位
福井県600305703,91315.3%1
高知県441114302,97014.8%2
島根県395223732,67114.8%3
奈良県659266334,86213.6%4
和歌山県610285824,56513.4%5
徳島県396143823,05513.0%6
鳥取県26482562,11912.5%7
鹿児島県699226775,67512.3%8
岩手県507194884,13512.3%9
大分県522155074,59011.4%10
宮崎県476124644,29611.1%11
富山県516394774,97710.4%12
熊本県688116776,9529.9%13
山口県545315145,7829.4%14
岡山県630555757,2698.7%15
愛媛県485144715,6938.5%16
滋賀県434224125,5977.8%17
山梨県264112533,5347.5%18
長崎県359263335,0227.1%19
秋田県259152443,7057.0%20
長野県508294797,5996.7%21
沖縄県35223505,3996.5%22
山形県273242494,4926.1%23
岐阜県527304978,9175.9%24
香川県225132124,0635.5%25
三重県393253687,3885.3%26
佐賀県165101553,1565.2%27
栃木県349213287,2704.8%28
茨城県5423051211,6884.6%29
新潟県403343699,3714.3%30
石川県208111975,4183.8%31
群馬県276352417,3713.7%32
青森県188101785,3703.5%33
静岡県4724942313,6653.5%34
北海道6547557919,4773.4%35
兵庫県6556359219,8233.3%36
宮城県249152348,4742.9%37
福島県236202168,6572.7%38
千葉県4963745918,9102.6%39
京都府2293019911,5382.0%40
神奈川県5125645629,0701.8%41
埼玉県4056434124,3641.7%42
広島県115308511,9881.0%43
東京都27516810744,0780.6%44
愛知県154688627,7470.6%45
福岡県104208421,6620.5%46
大阪府101851641,0460.2%47

 神奈川県は41番目でした。ただ、この数値は直接的に「道路啓開を行う力」を表しているわけではありません。横浜市には横浜市建設業協会、川崎市には川崎市建設業協会、相模原市には相模原市建設業協会が存在します。この政令指定都市の建設業協会は、全国建設業協会に属さない組織であり、神奈川県建設業協会の会員企業とは一致しません。この地域建設企業の団体に属している企業数が調べきれませんでした。ひとたび災害が発生すると「地域の建設企業」の窓口になるのは建設業協会です。地域の団体を含めて建設業協会に加盟している建設会社の数が実働部隊の数に近いと考えられます。

 この結果から分かることは限られますが、人口に比例して一定の地域建設企業が存在するとすれば、神奈川県は全国の都道府県、県内の市町村において連携に劣ることが考えられるのではないでしょうか?国、都道府県、市町村から届く連絡に対して窓口が一本化、団体加盟企業の対応が綿密に練られていないと、さまざまな発注機関から寄せられた情報に対して、調整や処理が追いつかない、対応がバラバラになってしまうことがあると思います。

 今回は地域の建設企業団体を調べきれませんでしたので、明確性に欠けました。次回はまた別の観点で、明確化できるようにして神奈川県と地域の建設業を見ていきます。

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