2025年、建設産業は「2025年問題」と呼ばれる大きな転換点を迎えました。特に1980年に約90万人いた大工が2020年には30万人を下回り、2045年には10万人を切ると予測されるなど、技能労働者の減少は深刻だと考えていました。海外の労働力に依存するような話になっていますが、これは技能継承を含めた解決策になり得るとは思えません。地域の建設業はどこへ向かっているのか?発展できるのか?破滅するのか?「2025年問題」の年を迎えるに当たり、いろいろと考えていました。
そうした中で2024年末はアメリカなどでAI関連の発表が相次いでいました。この内容を確認すると、IT技術の進歩が予想を超えており、何となく生き残れるような気持ちになりました。日常的に使う中で何となく感じてはいましたが、AIは、2025年が「AIエージェント元年」だそうです。進化してました。これに量子コンピュータ、ロボットといった先端技術が組み合わされば、労働力不足の解消、業務効率化、さらには建設産業の可能性を高められるように感じてしまいました。年末から年始にかけて集めた情報をざっとまとめてみました。予測があっているか?希望が沸くかは皆さんの判断にお任せします。
まず現状の課題です。
1. 労働力不足
建設技能労働者の減少は、建設産業全体の生産性に大きな影響を与えています。特に、技術継承が進まないことで、熟練した技能が失われるリスクが高まっています。また、海外労働力への依存が期待されていましたが、戦火の拡大や新たなパンデミックの懸念により、その供給が不安定になる可能性があります。個人的意見としては、国際的な紛争や疫病の危険性を含めると、地域の建設業にとって時間労働を含めた女性活用が最適解(言語の理解+居住地+技能継承+アルムナイ)だと思うのですが、理解されないのが、建設業界の難しいところだと思います(まだトンネルにも入れない?)。
2. 技術継承の停滞
若年層の建設業離れが進む中、熟練技能者の引退に伴い、技術継承が滞るリスクが顕在化しています。特に、木造住宅の建設に必要な伝統的な技術は、次世代に引き継がれない可能性があります。
3. コストと工期の課題
人件費の高騰や工期の長期化が、発注者の採算性を圧迫しています。特に、従来の建設プロセスでは効率化が難しく、これが建設産業全体の競争力低下につながっています。
次に技術革新の情報です。
1. AIエージェント
AIエージェントは、人工知能(AI)技術を活用して、ユーザーの指示に基づいて目標を達成するために自律的にタスクを実行するプログラムです。建設産業では建設現場の管理や設計支援、スケジュール最適化などの効果が期待できます。現状はBIM(Building Information Modeling)との連携により、設計から施工までのプロセスが効率化されていますし、AIを活用したドローンやセンサーによる現場監視が普及しつつあります。
個人的意見として、これまでのChatGDPなどに代表されるAIは、事前に大量の知識を学習し、対話型(指示・回答)で文章や絵などをつくりました。これを生成AI(ジェネレーティブAI)と呼びます。「AIエージェント」は、より自律的になります。例えば旅行の日時と予算をAIに指示すれば、観光地を巡る日程の検討からホテルや飛行機の予約までをAIが自動的に行います。この領域まで僅か数年で到達したことに驚きました。
AIエージェントの次は、「Physical AI(フィジカルAI)」とNVIDIAが名付けています。ロボットや自動運転車など物理空間で稼働する自律型マシンが、周囲を認識・学習しながら複雑な行動を取れるようにするAI技術だそうです。これも近い将来だと思うと、わくわく?
フェーズ1:2025年~2030年(基盤整備と初期導入)
2025年~2026年:AIエージェントが現場管理や設計支援において本格的に導入され始めます。特に、BIM(Building Information Modeling)との連携が進み、設計から施工までのプロセスがデジタル化されます。具体例としては、AIが設計案を自動生成し、最適なプランを提案。現場ではAIが進捗状況をリアルタイムで監視し、異常を検知するシステムが普及します。
2027年~2030年:自律型AIエージェントが現場監督の一部を代替し、少人数での現場運営が可能になります。自然言語処理技術の進化により、作業員との音声ベースのコミュニケーションが実現します。期待される成果は、現場管理の効率化、労働力不足の緩和。2030年までに自律型AIエージェントが現場監督の一部を代替し、少人数での現場運営が可能になります。さらに、自然言語処理技術の進化により、作業員との音声ベースのコミュニケーションが実現します。
フェーズ2:2031年~2035年(拡大と高度化)
2031年~2033年:AIエージェントが建設プロジェクト全体を統括するレベルに進化します。プロジェクトの進捗、コスト、リスクをリアルタイムでモニタリングし、最適な意思決定を支援します。具体例ではAIが複数の現場を同時に管理し、リソースの最適配分を行います。個人的意見として、この時点で現場監督の役割を果たしてしまうのか?に興味があります。
2034年~2035年:AIが建設プロジェクトの初期段階から関与し、設計、資材調達、施工、メンテナンスまでの全プロセスを統合的に管理する「スマート建設」が実現します。
フェーズ3:2036年~2040年(成熟と新たな展開)
2036年~2040年:AIエージェントが完全に自律的にプロジェクトを運営できるようになります。人間は監督や最終意思決定に集中し、AIが日常業務を全て管理する時代が到来します。具体例ではAIが建設現場の全てのリソースをリアルタイムで最適化し、プロジェクトの遅延やコスト超過を完全に防止します。
これがAIのロードマップです。これに加味する技術として「量子コンピューター」があります。これは量子力学の原理を利用して、従来のコンピュータでは解くのが難しい複雑な問題を高速に解くことができるコンピュータです。複雑なシミュレーションや、最適化問題の解決において大きな可能性を秘めています。まだ一般的ではありませんが、既に汎用チップの開発が発表(googleが量子チップを発表したと2024年12月10日にBBCで報道されていました)されており、将来的な実用化が見えています。
個人的には現場での作業を事前にシミュレーションできるようになると手戻りがなくなると思いました。昔から言われていた「段取り八分」が秒になり、複合施設などの複雑な構造でも工事の最適解が見つけられるようになります。所長の力量ではなくなります。
2,量子コンピューター
フェーズ1(基盤整備と初期導入)
2025年~2028年:量子コンピュータはまだ実験段階ですが、建設業界では耐震性や環境負荷のシミュレーションなど、特定の分野で試験的に活用され始めます。都市計画やインフラ設計における複雑な計算を短時間で処理します。
2029年~2030年:量子コンピュータが資材調達や物流の最適化に活用され、コスト削減や効率化が進みます。特に、大規模プロジェクトでの活用が期待されます。
フェーズ2(拡大と高度化)
2031年~2033年
量子コンピュータが本格的に実用化され、建設業界での利用が拡大します。特に、都市全体のインフラ設計や交通システムの最適化において重要な役割を果たします。具体例で言えば都市計画におけるシミュレーションが飛躍的に精度向上します。
2034年~2035年:新しい建材の開発が加速し、量子コンピュータを活用した材料設計が普及します。これにより、軽量で耐久性の高い建材が市場に登場します。
フェーズ3(成熟と新たな展開)
2036年~2040年:量子コンピュータが建設業界の標準技術となり、都市全体のシステム設計や環境負荷の最小化に貢献します。具体例ではスマートシティの設計や運営において量子コンピュータが中核的な役割を果たす。
AIが思考回路、量子コンピューターが頭脳だとすると、あとは身体が整えばロボットになります。既に住宅であれば3Dプリンターがあり、移動手段は自動運転の車がつくられていますので、二足歩行できる人間に近いロボットの誕生に興味がわきます。
HONDAのロボット「ASIMO」は、人間のつくったプログラミングで動作を制御していました。当時の世界最先端技術でした(現在は開発終了)。しかし現在の開発が進むロボットはAIに学習させて動きをコントロールしています。人間がシステムをつくりませんので、発想が全く異なります。AI技術の進化によって学習能力が高まり、社会に実装される日が、早くなっている訳です。2年前は2030年ごろ、昨年当初は2026年ごろ、と言われていました。今年(正確には2024年12月ですが)に入ると「2025年内に販売」となりました。試験的(AI学習を兼ねている)ではありますが、いよいよ一般家庭にロボットが届きます。これまでの報道ですと家庭で人間の動きを学ばせて、そのデータを中央AIに送り、最適化を図るバージョンアップを数年間、繰り返すそうです。
JR西日本は3Dプリンターで駅舎をつくるそうです。和歌山県での実証実験が報道されていました。48時間で駅舎を作り上げてしまうそうです。ロボットは世界各国で発表されていますが、トヨタ自動車の子会社が2025年ごろに家事支援ロボットを発売するという報道がありました。
3,ロボット
フェーズ1(基盤整備と初期導入)
2025年~2026年:単純作業を自動化するロボット(例:コンクリート打設ロボット、塗装ロボット)が普及し始めます。搬送ロボットも現場での資材運搬を担い、作業員の負担を軽減します。
具体例では3Dプリンターを活用した建設が一部のプロジェクトで採用され、工期短縮が実現します。
2027年~2030年:
協働ロボット(コボット)が普及し、人間とロボットが協力して作業を行う環境が整備されます。災害対応ロボットも試験的に導入され、災害時の復旧作業が迅速化されます。2030年までに協働ロボット(コボット)が普及し、人間とロボットが協力して作業を行う環境が整備されます。
フェーズ2(拡大と高度化)
2031年~2033年:建設ロボットが高度化し、建物の一部を自動で組み立てる技術が一般化します。特に、3Dプリンターと連携したロボットが住宅建設やインフラ整備で広く活用されます。橋梁やトンネルの建設はロボットがほぼ自動で行うことになるそうです。
2034年~2035年:災害対応ロボットが高度化し、被害を受けた建物の調査や復旧作業を迅速かつ安全に行えるようになります。災害現場まで入れるというっことは、頭も良く、身体も強く、機転が利く、のでしょうか?
フェーズ3(成熟と新たな展開)
2036年~2040年:完全自律型の建設ロボットが普及し、建設現場のほとんどの作業がロボットによって行われるようになります。人間は監督や創造的な設計に専念します。住宅やインフラの建設が短期間で完了し、コストも大幅に削減します。
まとめ
これが年末年始に読んだAI関連情報の要約です。建設産業は、労働力不足や技術継承の停滞といった課題に直面していますが、AIエージェント、量子コンピュータ、ロボットといった先端技術の進化が新たな解決策を提示しています。これらの技術を段階的に導入し、効率化と持続可能性を実現することで、建設産業は新たな価値を創造し、未来に向けた成長を遂げることが期待されます。
個人的に気になるのは、伝統的技能がなくなるのか?既存施設の改修はどうなるのか?職人はどこにいくのか?という面ですが、木造建築の文化や技術は日本特有の伝統財産でもあり、3Dプリンター住宅への移行が加速したことで大工技能者の役割はさらに限定的になるようです。とはいえ需要が少ないからこそ希少価値や技術継承の重要性が高まり、特化した職人として活躍する道が開ける可能性もあります。設計事務所もデザイン性が問われるようになど、人の手による作業は一定程度、残ると思います。 人間の仕事が残るかもしれないと思えると個人的には安心します。ただ、AGI(汎用人工知能)の完成が現実に近づいているようで、人間を超えるASI(人工超知能)が登場してくると、私の想像力では太刀打ちできない、現在の予測を超える状況が生まれるのだと思います。
おわり
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