だれが街並みを守っていくのか(1)

 2025年12月、改正建設業法により「標準労務費」制度が施行されました。バブル崩壊後、賃金の低下や若年労働者・入職者不足に喘ぎ、10年以上前から絶え間なく待遇改善の声をあげてきた施工技能者(職人)の声がやっと国に届き、実を結びました。これで賃金に法的な下限が設けられました。

 この発表を前にした2025年11月26日、建設コンサルタンツ協会、全国測量設計業協会連合会、全国地質調査業協会連合会の3団体は、国土交通省を訪れ、金子恭之国交相に対して、技術者単価の更なる引き上げや業務量の安定的な確保、賃金や物価変動に対応した設計業務委託費に関する要望書を手渡しています。公共工事の委託部門を担う3団体は、技術者の単価確保の動きに歩調を合わせていました。

 しかし建設産業の重要な担い手である建築士の世界(団体)に、このような活動を確認できません。
不思議です。国土交通省の「建築分野の担い手の動向について」(2025年4月1日)によると、決して産業としての将来性を楽観視できるような状況には思えないからです。

年代平成20年
(推計)
令和6年変化評価
20代1,883人
(2%)
2,134人(1.6%)構成比▲0.4pt補充が追いついていない
30代24,923人(21%)13,023人(9.7%)実数▲48%15年で半減の激減
60代以上約12%約44%(3.6倍)3.6倍に急増大量離職が目前

 専門紙の報道を見ていると、大手設計事務所でも人材確保に苦慮している様子が覗えます。このため毎年のように賃上げなどを繰り返しているように感じるのですが、自らの技術者の単価を引き上げるようとする動きは建築士の団体からは出てきません。自らの事務所の技術者に対して賃金の引き上げを行う一方で、産業界として技術者全体の単価引き上げを望まない姿(声を上げることを避ける姿勢)には違和感しかありません。

 ある建築士団体の代表は建築士を「絶滅危惧種」だと言いました。大手組織事務所ですら体制を保つことに苦労する人材の争奪戦の中で、地域のまちづくりを担ってきた建築士の方々は、真っ先に消滅する存在に思えるのです。実際に一級建築士事務所数は2023年に7万0725事務所でした。ピーク時だった2016年は9万2139事務所でしたから、22年間で、2万1000事務所(23%)が消滅した計算です。

 一級建築士事務所の年齢構成は、2008年に約12%だった「60歳以上(60代+70代以上)」が、2024年には44%を占めるまでに増加しました。70代以上が19.0%も存在します。一方で「20代」は2%が1.6%の微減でしたが、「30代」「40代」「50代」はそれぞれ約10%減少し、9.7%、18.7%、26.4%です。若手がいないだけでは無く、中堅もいないように見えます。単純計算だと、これまでは年間で約1%の減少でしたが、70代の一級建築士が80代になった時に事務所をたたむと考えると、これからの10年は毎年約2%減ということも考えられます。

この様な状況下にありながら何故、賃金の問題に結び付かないのでしょうか?

【続く】

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