だれが街並みを守っていくのか(4)

 公共工事(土木・建築など)では最低制限価格や低入札価格調査制度が設けられており、ダンピング(過度な安値受注)を防ぐシステムが存在します。国土交通省の「令和7年度 入札契約の適正化の取組状況に関する調査結果」(2025年12月19日公表)を見ると(AIの分析)、国(19)、特殊法人等(120)、都道府県(47)、指定都市(20)のいずれも最低制限価格あるいは低入札価格調査制度の両方を導入していない自治体は存在しません。市区町村(1721)で両方とも未導入は58団体だけで、率にして全体で3.01%です。市区町村に限った割合でも3.4%です。
 しかし業務委託に関しては、がらりと様相が変わります。国土交通省の「令和7年度 業務に関する発注関係事務調査の結果について」(2025年12月19日公表)を見ると(AIの分析)、2025年6月1日時点で未導入は、国(19)が3団体、特殊法人等(120)は20団体、都道府県(47)は2団体、市区町村(1721)は642団体もあります。導入率が最も高い建築コンサルタントに限っても、低入札価格調査制度あるいは最低制限価格を導入していない団体は全体で36.01%、約4割の団体が未導入です。未導入率は国5.3%、特殊法人16.7%、都道府県2.1%、市区町村39.0%です。指定都市(20)だけが全て、導入されています。

 ここで1つの仮説を考えました。「最低制限価格あるいは調査基準価格がないと落札金額が底抜けする」というものです。しかし都道府県と指定都市を見る限り、この仮説ははずれました。福岡県は業務委託4業種、大分県は業務委託3業種(土木コンサルタント、測量、調査)でダンピング対策(最低制限価格あるいは低入札価格調査制度)を設けていないのですが、底が抜けていません。建築コンサルに限れば、ダンピング対策を導入している青森県が79.7%で最低でした。福岡県は19番目で47都道府県で考えれば上位になります。両県は、土木コンサルタント、測量業務、調査業務に最低制限価格等を設けていませんが、いずれも47都道府県中で下位に位置しません。

 そして仮説が正しければ、指定都市は20団体すべてが導入済みなので差が開かないことになります。しかし、建築コンサルタントの最上位は北九州市の95.1%、最下位は岡山市の79.3%で、15.8ポイントの開きが生じました。都道府県の14.0ポイント(北海道・新潟県:93.7%、青森県:79.7%)よりも差が広がってしまいました。

 公共工事は違います。都道府県で8.1ポイント差(島根県:97.8%、奈良県:89.7%)、指定都市は5.7ポイント差(浜松市:94.8%、堺市:89.1%)しかありません。元々、工事は最低制限価格等が90%前後に設定されているわけですから、80%前後に設定されている業務委託より幅が狭くなるわけです。上限値(100%)から10%の範囲内ですので、業務委託よりは地域差や条件設定の違いによる差が生じにくい構造になっています。
 工事と建築コンサルタントの落札率の差異は、都道府県で平均6.0ポイント、指定都市で平均4.1ポイントの差が生じていました。指定都市の方が工事の落札率が都道府県よりも低く、建築コンサルタントの落札率が高いことになります。

 ただ、都道府県と指定都市は、ほとんどの団体がダンピング対策を導入しているので、導入、未導入による差が見えにくいとも考えられます。そこで、1721団体ある市区町村を見てみます。AIが集計した結果は以下のとおりです。

 建築コンサルタント業務の平均落札率(有効回答数:1,300団体)は、87.3%になりました。都道府県は88.0%、指定都市は87.7%でしたから、平均値で最下位になりました。工事(有効回答数:1,618団体)では落札率が70%を割る自治体は全国で1団体しかありませんが、業務では85団体あります。これが大きく平均を引き下げていることになります。建築コンサルタントの「落札率70%未満の団体」の中には最も低い落札率に41.6%の団体もありました。
 AIの分析によると、「工事にダンピング対策を持つ自治体を、設計業務にも持つ群と、持たない群に分けると、業務の落札率の中央値はそれぞれ89.6%と89.9%でほとんど変わらない。差が出るのは下側です。落札率が70%を割る自治体は4.5%から10.8%へ、80%を割る自治体は16.1%から26.8%へ、いずれも倍増します。最低制限価格は相場を引き上げる仕組みではなく、底が抜けるのを防ぐ仕組みであり、それ(最低制限価格)がない自治体では実際に底が抜けている」としています。

 「中央値」という見方ですが、これは落札率を小さい順番に並べた真ん中の数値です。極端な数値に影響を受けません。市区町村の中に平均落札率100%が23団体あったこともあり、中央値は90.0%になりました。都道府県の88.3%、指定都市の88.2%を上回りました。
 更に詳しく分析するため、市区と町村を「業務に制度あり」の群と「業務に制度なし」の群に分けてAI分析を行いました。その結果は以下のとおりです。

 町村に限れば、ダンピング対策があろうが無かろうが、落札率の水準は全体として高いことがわかりました。平均値と中央値の差は、都道府県が0.35ポイント、指定都市は0.41ポイントですが、市区町村では2.71ポイントに広がります。平均落札率を引き下げたのは下位10%の団体です。つまり「底抜け」している団体を除けば、平均落札率は89.75%まで引き上がります。一方で、町村は「制度あり」より「制度なし」の方が平均落札率が高くなりました。これも「落札率100%」の団体が大きく影響していると思われます。23団体中18団体が町村(町:14、村:4)だからです。

 結果として、ある程度、ダンピング対策は有効ですが、これとともに競争環境の影響が大きいような気もします。町村は、都道府県や指定都市、市区よりも業務委託の発注件数が少なく、数件の結果が平均値に影響を及ぼすことに加えて、競争入札の参加者が限られることも原因にあるのではないかと思います。そこで次は実際の自治体の状況を詳しく見ていきます。

 

【続く】

 

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