前回は、横浜市の競争入札結果を詳細にAIに調査してもらいました。この結果で少し違和感を感じる部分がありました。落札率と最低制限価格率の乖離です。横浜市でも工事であれば最低制限価格率等に貼り付いていたのですが、建築設計は異なりました。
やはり1自治体だけを見て判断するのは危険だと思うので、他自治体を調査してみることにしました。私のイメージではありますが、横浜市と神奈川県を比べると、神奈川県の方が、より実態に即した入札契約制度を構築している感覚があり、建築設計に限れば最低制限価格の設定率も横浜市より高く設定しており、落札率も高いはずです。しかし、国土交通省の調査では神奈川県の方が低くなっていました。そこで今回は神奈川県の電子入札結果をAIに調べてもらうことにしました。
前提条件は一緒です。神奈川県の場合、「かながわ電子入札共同システム」の「入札情報サービスシステム」から、団体名「神奈川県」で「コンサル」「建築設計」を選びました。この結果、なんと令和6(2024)年度は3件でした。これほど少ないことは考えられません。これは何かの間違い、あるいはデータが消去されてしまったのだと考え、2025(令和7)年度を選び直すと116件が該当しました。国や横浜市との比較はできませんが、1年でそれほど大きく数字が動くことはないと考えて、2025年度の調査をAIに依頼しました。その結果が以下のとおりです。
116件のうち、随意契約は45件、一般競争入札(標準型)66件、指名競争入札5件です。さらに入札不調も発生していたため、競争入札の実数は60件となりました。金額の数値は全て税別です。
ちょっと衝撃的でした。最低制限価格設定率が全件例外なく「81.00%(予定価格×0.81)」に完全固定されています。横浜市における2024(令和6)年度の最低制限価格率77%台と異なり微調整もなく横浜市よりも「約3.51ポイント高い下限水準」に設定されています。過度な価格競争・ダンピング防止を重視している姿勢が明確です。
にもかかわらず平均落札率は84.8%です。工事と同様にほとんどが最低制限価格に貼り付きました。この結果、横浜市における2024(令和6)年度の平均落札率89.4%に対し、約4.6ポイントの差を付けられました。横浜市よりも平均最低制限価格率は3.5ポイントも高いのですが、平均落札率は4.6ポイントも低く、結果的に8.1ポイントの乖離が生じています。ダンピング防止への積極的な取り組みにも関わらずです。


応札業者数は5.4者で、横浜市よりも0.5者ほど多くなりました。横浜市は10者を超える応札が55件中1件しかありませんでしたが、神奈川県は71件中6件ありました。競争率が高い傾向は読み取れます。
部局別の平均落札率を見ると主要発注機関の県土整備局が最も低くなります。次いで低いのが、総務局、教育委員会の順です。金額構成比で億単位の金額を持つ警察本部は80%台後半の高い落札率になりました。
不調は合計で11件です。6.5件に1回発生しています。横浜市は3回目まで引っ張るので不調の件数は少なかったのですが、神奈川県は15.49%(落札成立率84.51%)と高い割合に見えます。件数の最も多い県土整備局で発生率は少なかったものの、金額シェアが最も大きく、件数で2番目に多い教育委員会は高い発生率になっています。地域県政総合センターは全て不調となりました。100%不調です。

入札方式別では、平均落札率は指名競争入札が89.55%で、一般競争入札の84.6%よりも4.95ポイントも高くなっています。この傾向は横浜市と一緒です。ただ単純に横浜市と比べるのは問題があるかもしれません。横浜市は案件割合で53.7%(一般競争)と46.3%(指名競争)でしたが、神奈川県は93.0%(一般競争)と7.0%(指名競争)ですから、比較件数が大きく異なります。
一方、競争入札の参加者数は一般競争入札が指名競争入札よりも高くなりました。これは計算方式による違いで、不調を除くと、一般競争入札5.21者(302者÷58件)、指名競争入札11.00者(22者÷2件)で指名競争入札が高くなるのですが、不調を含めると、一般競争入札4.58者(302者÷66件)、指名競争入札4.40者(22者÷5件)です。横浜市の場合、指名競争入札の平均参加者数が6.2者で、一般競争入札は3.9者ですが、これは落札だけの数字です。神奈川県と違って競争入札を第3回目まで引っ張るので不調が発生しにくいのです。
結果、神奈川県の応札業者数は全体平均で5.4者(不調を含めると4.56者)になりました。不調を含めた数字だと神奈川県の一般競争と指名競争で応札者数に大きな違いはありません。ただし不調の割合は一般競争入札の発生率12.12%に対し、指名競争入札は60.0%となっており、指名業者の辞退などが相次いでいるようです。横浜市の指名競争入札と神奈川県の指名競争入札には大きな違いがあります。

神奈川県も建築工事を見る必要があると考えたので、横浜市と同様にAIによる調査を実施しました。2025(令和7)年度の該当件数は随意契約と不調を含め、計97件でした。最低制限価格の調査で、他の都市と違うことは総合評価落札方式に「品質確保保証価格」という制度があることです。この品質確保保証価格の下に「失格基準価格」があり、失格基準価格は最低制限価格と同様に即座に失格となる絶対下限値です。品質確保保証価格は調査基準価格と同様の制度だと考え、調査基準価格として記載しました。また、横浜農業合同庁舎はWTO対象工事なので失格基準がありませんでした。
調査の結果、建築工事の落札率は94.86%になりました。国交省の調査結果(2024年度)は90.8%でしたから、約4ポイントも高くなり、横浜市の2024(令和6)年度との比較になりますが、建築工事の落札率を3ポイント上回りました。一方で、最低制限価格等の設定率は92.14%。横浜市が93.13%ですので、横浜市よりも約1ポイント低くなりました。最低制限価格などの内訳は、最低制限価格率が91.98%、調査基準価格(品質確保保証金額)の設定率が93.29%でしたので、総合評価落札方式の方が設定率が高かったことになります。
平均応札業者数は4.44社で、横浜市の5.6社よりも1.2社少なくなりました。



神奈川県の最低制限価格の設定率は横浜市よりも低くなりましたが、この要因の一つは85.0%階層にあります。横浜市の場合は、修繕工事などを横浜市建築保全公社に委託するので直接発注することはありません。神奈川県はこのような第3セクターは存在しないので、簡易な工事を発注すると最低制限価格の設定率が下がると思われます。神奈川県教育委員会も民間企業には施工者の選定を含めて外注しているので、正確な比較になるとは限りませんが、この85%を除くと、最低制限価格率は単純平均で93.64%になります。金額加重平均だと93.84%です。横浜市の93.13%(2024年度)を超えました。93%以上の2階層は、構成比で3/4以上(約77%)を占めます。

神奈川県で業務委託と工事請負における平均落札率の乖離は、建築設計の84.77%に対して、建築一式工事は94.86%です。結果として10.09ポイントの差が開きました。国土交通省の調査結果(2024年度)で示された、建築一式工事90.80%、建築設計81.00%の9.8ポイント差よりも拡大しました。横浜市(2024年度)の場合、建築設計89.4%、建築工事94.5%で5.1ポイントの差です。神奈川県は横浜市よりも建築設計が悪い環境にあることになります。
しかし自治体の意図は最低制限価格によって表れると捉えることもできます。神奈川県は建築設計の平均値(最低制限価格率)は81.0%で、建築一式工事の平均値(最低制限価格等率)は92.14%です。11.14ポイントの差でした。横浜市の場合、建築設計77.49% 建築工事93.13%ですので15.64ポイントの差がありました。
つまり行政の意図しない、厳しい競争環境が生まれてしまっている可能性があります。
【続く】


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